アイリ

第一回

アイリ:
ふむふむ…さすがに
どなたも粒ぞろい…
目移りしてしまいますわ。

こうなったら、全員まとめて
精気をいただいてしまおうかしら…
でも、どうすればあんな大勢を…?

ジャン:
いや〜、今日もいい天気だな〜…って、
アイリさん、なにやってるんですか?
物陰なんかに隠れて。

アイリ:
ひぇっ!?

ジャン:
!? ど、どうしたんですか!?

アイリ:
ど、どなたかと思えば…
ジェル様でしたか。

ジャン:
ジャンです。

アイリ:
それは失礼しました。
しかし、これはジャン様にはまるで
関わりのないことですので…

ジャン:
でも…アイリさん、様子が変ですよ?
隠れてないで、みんなのところに
行きましょうよ。

アイリ:
えい、私はここで結構ですわ。

ジャン:
? どうしたんですか?
…もしかして、誰かとケンカしたとか?

いえいえ、とんでもありませんわ。
私が皆様と争うなんて…

ジャン:
そうですか? だったらどうして…
…あ、わかった!!!

アイリ:
(ギクッ!)

ジャン:
トイレですね? 冒険の途中って、
トイレがなくて困りますよね〜。でも安心
ですよ。無効に僕の掘った穴が…

アイリ:
ち、違いますわ!
勝手に納得しないでっ!
私はただ、皆様の精気を…

ジャン:
へ…? せいき…精気?

アイリ:
(あ、しまった…つい…)

ジャン:
皆さんの精気…?
それ、どういうことですか、
アイリさん?

アイリ:
…仕方ありませんわ。もうジャン様には
隠せませんわね…

こうなったら、あなたにも
きっちり協力していただきますわよ?

ジャン:
きょ、協力…? なにを?

アイリ:
あなた様は黙って私に従えばいいのですわ。
さもなくば…

ジャン:
わ、わあ! 鎌を突き付けないで
ください、鎌を!

アイリ:
納得していただけたようで
よかったですわ。

ジャン:
…で、あのう…協力って、
僕はなにをお手伝いすれば…?

アイリ:
ここでは人目に付きますから、
詳しくは次の機会に話しますわ。

では、ご機嫌よう。

ジャン:
は、はあ…?
…行っちゃった…

よくわからないけど、アイリさんに
こき使われることになりそうだなあ…

…ま、いいか。どうせヒマだし、これを
機会にしてアイリさんともっと仲良く
なれるかもしれないしね…うふふふ…

第二回

ジャン:
え〜と、アイリさんはどこかな?
…こんな寂しいところによびだして、
いったいなんの用だろう?

アイリ:
お帰りなさいませ、ジェル様。

ジャン:
うわぁ!? あ、アイリさん!?
急に後ろから出てこないでくださいよ。
オバケが出たかと思いましたよ。

アイリ:
…ある意味では当たりですけれど…
まあいいですわ。じゃあ、さっそく
今日から手伝っていただきます。

ジャン:
あのう〜…それで、僕は何を手伝えばいいのでしょうか?

アイリ:
この間も言いましたように、
女性の皆様の精気を吸うため
作戦を立てていただきたいのです。

ジャン:
精気を吸う…?

アイリ:
ええ。せっかくお美しい方たち
と一緒に旅をしているのですから。

この機会に大量の精気を
いただけないかと。

ジャン:
お、女の子の精気ですか…
せ、精気…せいき…ぐふふ…

アイリ:
…なんだか、ジェル様が言うと
すごく嫌な響きになりますわね…
とりあえず、ヨダレを拭いてくださる?

ジャン:
す、すみません…つい興奮して…
それはそうと、1回スルーしちゃいましたが
僕の名前はジャンですってば。

で、でも、女の子の…仲間の
精気を吸うだなんて、良くない
ことなのでは?

アイリ:
まあ、良いことではないのは
たしかですわね。

ジャン:
な、なら…!

アイリ:
でも、私にとってもこれは死活問題。
生きるための食事なのですわ。

それに、精気を吸うと言っても
命までいただくわけでは
ありませんもの…ね?

ジャン:
は、はあ…でも、それなら
僕の精気とかじゃダメなんですか?
わざわざ女の子を襲わなくても…

アイリ:
別に男性でも大丈夫ですけれど、
やっぱり美女の方が好みですわ。

ジャン:
あ、そうなんですか…
でも、やっぱり女の子を襲うのは
良くないような…

アイリ:
…納得できないというなら、
もういいですわ。私ひとりでも
なんとかできますもの。

ジャン:
あ、いえ、そんな!
手伝います、手伝いますってば!

(アイリさんを放っておいたら、
どんな無茶をするかわかったもんじゃ
ないからな…)

(僕がアイリさんをしっかり監視して、
仲間を守ってあげなくちゃ!)

アイリ:
本当ですの?
良かった…やはりあなた様は
頼りになりますわね!

ジャン:
いやあ、そんな…

(それに、こうしてアイリさんとの
中を深めていけば…)

(ぼ、ぼぼぼ、僕のほうが精気を…
アイリさんと吸ったり吸われたり
しちゃったりなんてことも…?)

アイリ:
(ジャン様、何を
ニタニタしているのでしょう…
気持ち悪い…)

と、とにかく、よろしく
お願いいたしますわよ?

ジャン:
は、はい!

アイリ:
それでは、美女たちの精気を
おなか一杯吸ってしまいましょう〜!

ジャン:
(…やはり、なんとしても
アイリさんの暴走を止めなくては…
ぎ、逆の意味でがんばるぞ〜!)

第三回

ジャン:
さて、アイリさんの手伝いを
すると言ったはいいものの…

やっぱり、どうにかして
やめさせないとなあ…
う〜ん、どうしよう?

…そうえいば、アイリさんは
美女の精気が好きだって言ってたけど…
仲間の女の子たちを守るには…

! …そうだ! ぼくがアイリさんに
男らしいところを見せて、女の子よりも
男に…僕に興味を持たせられれば…

そうすれば仲間を守れるし、
僕とアイリさんも…ムフフ…
よし、そうだ! それがいい!

アイリ:
なにを大声で叫んでいるんですの、
ジャン様? (ここは名前を変更していてもジャンと呼ばれるようです。ミス?)

ジャン:
いや、ですからジャンですってば。 (ここは変更した名前を言います)

アイリ:
ええ。そうお呼びしましたが。

ジャン:
あ、あれ? そうでしたって?
…そういえばそうですね。
すみません…ついうっかり。

って、そうじゃなかった!
実はアイリさんに用があったんです!

アイリ:
? 私にご用ですの?

ジャン:
は、はい! 僕、もっと
アイリさんのお役に立ちたくて、
いろいろ考えてたんですよ!

アイリ:
あら、本当ですの?
それで、なにか良い考えは
浮かびましたの?

ジャン:
ええ! 美女の精気を集める
ためには、まずアイリさんと僕が
理解を深める必要があると思います!

アイリ:
理解を深める…?
具体的にはどういうことですの?

ジャン:
難しいことはありませんよ。
アイリさんと僕がお話をして、
お互いの気持ちをよく知ればいいんです。

アイリ:
私の気持ち…?

ジャン:
はい。例えば僕がアイリさんの
立場に立って、もっとアイリさんを
理解すれば…

アイリ:
あ、なるほどですわ。
ではさっそく…

ジャン:
え、アイリさん?
どうして鎌を…?

う、うひゃあっ!?
危ないっ!

な、なんで鎌を振り回すんですか!?
しかも、きっちり僕の首を狙って…!

アイリ:
でも、私の立場に立ちたいのでしょう?
でしたら、同じレイスになっていただくのが
より確実かと思いまして。

ジャン:
れ、レイスって、死霊!?

アイリ:
ええ。うまくレイスになれるかどうかは
わからないけれど、とりあえず
やるだけやってみましょう。

ジャン:
そ、そんな軽い気持ちで僕の
首を狙わないでくださいっ!

アイリ:
嫌ですわね、大声をだして。
そんなことじゃ、お互いを理解
し合おうなんて不可能ですわよ?

先が思いやられますわね…
やれやれですわ。

ジャン:
そ、それはこっちのセリフですっ!

(や、やっぱりアイリさんは
ちょっとズレてる…危険だ。
僕が仲間たちを守らないと!)

アイリ:
はあ…今日は気分が乗りませんわ。
でも、次回はしっかり手伝って
もらいますわよ?

では、ごきげんよう。

ジャン:
は、はい…では、また…

(時間がない…どうにかして
僕の男らしさをアイリさんに証明し、
男の良さを理解させなければ!)

第四回

ジャン:
ふん、ふん!
…ふう、たまには訓練もいいものだな。

素振りなんて久しぶりだけど、常に
先頭に備えておかなくちゃいけないし…

なにより、アイリさんに僕の
男らしさを認めてもらわなくちゃ
いけないもんね。

アイリ:
あら、ジャン様?
何をなさっているのでしょう?

あ、アイリさん!
…いやあ、ちょっと素振りをですね…

そうれすか、鍛練を欠かさないとは、
ジャン様にも意外な一面が
おありなのですね。

ジャン:
いやあ、アイリさんに褒められると
照れちゃいますよ、へへへ…

アイリ:
手荒な真似はしたくありませんけれど、
精気をいただくため、時には武力を
行使する必要もありますものね。

ジャン:
あ、いや…ええ、まあ…
…そ、それよりアイリさん!
どうですか、僕の腕?

アイリ:
? ジャン様の腕…?
ええと、2本ありますわよ。

ジャン;
あ、いえ、数じゃなくて…
どうですか、僕の筋肉?
力こぶとか、男らしくないですか?

アイリ:
…どこにも力こぶなんて
見えませんけれど…?
平らでナヨナヨした腕ですわね。

うっ…そんな、ひどい…
…で、でも、大切なのは見た目じゃ
なくて中身です!

僕、戦いで鍛えられてるから
意外と力持ちなんですよ?

アイリ:
…そうでしょうか?
…まあ、夢を見る権利は誰にでも
ありますわ。

ジャン:
う…口調は丁寧だけど、ものすごく
辛口ですね…い、いいでしょう。
だったら僕の力を証明して見せます!

アイリ:
きゃ…ちょっと、なにを
なさるおつもりっ!?

ジャン;
ちょっとその鎌を貸してください!
男の僕にかかれば、アイリさんの
武器なんて軽々と…軽々と…?

アイリ:
…どうなさいました、ジャン様?
座り込んでしまって…

ジャン:
お…重いぃぃ…
アイリさん、普段、こんなに重い
武器を振り回しているんですか!?

アイリ:
嫌ですわ、人を怪力女みたいに。
こういうのは、コツをつかめば案外
軽く振れるものなんですのよ。

ジャン:
そ…そうは言っても…
ぜ、ぜんぜん持ち上がらない…

アイリ:
呆れましたわねえ。
ジャン様、鍛え方が
足りなすぎるのではありませんか?

ジャン:
は、はあ…面目ない…

アイリ:
私の精気集めに協力してもらうからには、
もっと頼れる人になってもらわなくては
困りますわよ?

ジャン:
はい…そうですよね。
以後、気を付けます…

アイリ:
お分かりいただければ結構です。
では、鍛練にお戻りなさい。

ジャン:
い、イエス、マム! ジャン、
鍛練に戻りますっ!

アイリ:
いい返事ですこと。
では、ごきげんよう。

ジャン:
はい! ありがとうございましたっ!
…いやー、アイリさんは頼りになるなあ。
僕ももっと強く…

…って、違うっ!

アイリさんに男のたくましさを
アピールするはずだったのに、これじゃ
あべこべじゃないか!

くうぅ…僕が頼りないばっかりに、
作戦が失敗してしまった…

でも、次こそはアイリさんに
男の素晴らしさを理解させて
みせるぞー!

第五回

ジャン:
さて…前回はアイリさんに
男らしさを理解させることは
できなかったけど…

別に大切なのは腕力だけじゃ
ないもんね! もっと僕に合った
アピール方法があるはずだ!

…というわけで、今日は料理に
挑戦してみよう。男の料理ってやつで
僕の魅力をアピールだ!

肉も野菜もドバーッと入れて、
ワイルドなシチューをアイリさんに
ごちそうしてあげよう!

ジャン:
『ジャン様、料理がお上手ですのね…
あなたとなら良い家庭が作れそうですわ』
…なんて言われちゃったりして…でへへ。

よーし、がんばるぞー!

…さて、そろそろできたかな?
…うん、いい味付けだ。
じゃあアイリさんを呼んでこよう!

アイリ:
…ジャン様? 
突然呼び出して、なんのご用でしょう?

ジャン:
いやあ…今日は、普段メイドさんとして
がんばっているアイリさんを、逆に僕が
もてなしてあげようと思いまして。

アイリ:
もてなす…私を?

ジャン:
はい! だから、今日の食事は僕に
任せてください! 遠慮なく、
お腹いっぱい食べてくださいね!

アイリ:
そんな…お気持ちはありがたいけれど、
お言葉に甘えるわけにはいきませんわ。

ジャン:
遠慮しないでくださいってば!
僕からのささやかな気持ちですから。

アイリ:
でも…本当にいいんですの?
私って、案外たくさん食べますわよ?
ジャン様の分がなくなってしまうかも…

ジャン:
大丈夫! 僕のことは心配しないで
ください!

アイリ:
ジャン様…本当にいいんですのね?

ジャン:
(わ…アイリさん、僕の手を握って…
そんなに感激してくれたのかな?)

(こ、これは…僕たちの仲が
急接近している予感…!)

アイリ:
…では、遠慮なくいただきますわね。

ジャン:
はい、どうぞ! 自慢のシチュー…

アイリ:
いただきま〜す!
(かぷっ)

ジャン:
へっ…?
あ、あの…アイリさん? どうして
僕の腕に噛みついて…

アイリ:
んぐ、んぐ…

ジャン:
あ、あれ…? ち、力が…
抜けて、いく…?

アイリ:
ん〜、久しぶりの精気ですわ〜。
んぐ、んぐ…

ジャン:
ちょ、ちょっと、アイリさ…!
…ふわぁ、だめだぁ…
抵抗する力が…出ない…

アイリ:
今日はお腹いっぱい
いただきますわよ〜!
んぐ、んぐ…

ジャン:
だ、誰かぁ〜…

アイリ:
ぷはぁ〜!
御馳走様でした。

ジャン:
う…うぅ…あうぅ…
…ぼ、僕、生きてる…?

アイリ:
ん〜…やっぱり美女の精気の方が
好みですけれど…

とりあえず、お腹はいっぱいに
なりましわ。
ありがとうございます、ジャン様。

ジャン:
ひゃ、ひゃい…喜んでいただけた
ようで…にゃにより…

アイリ:
ちょっと吸いすぎましたかしら?

…ちょうどここにシチューがある
みたいですから、これを食べたら
元気が出るかもしれませんわよ?

ジャン:
ふぁ、ふぁい…
後で食べます…今は…食事をする
気力もないもので…

アイリ:
そうですの? くれぐれも体調には
お気をつけて。では、ごきげんよう。

ジャン:
う…うぁう…ひゃい、
さようなら…

う…うかつだった…アイリさんに
とっての『ごちそう』っていうのは、
精気を吸い取ることだったんだ…

とりあえずアイリさんは喜んでくれた
みたいだけど……か、体が動かない…
…誰か、助けてぇ〜…

第六回

ジャン:
あぁ…この間はひどい目にあった。
精気を吸われるのって、ものすごく
疲れるんだなあ…

あんなに疲れるんじゃ、誰かに頼んだって
精気を吸わせてくれるはずがないよなあ…
アイリさんも大変だな。

アイリさん、普段はどんな風にして
食事…精気を集めてるんだろう?

僕以外の仲間が襲われたら大変だし、
今後のためにもアイリさんに聞いて
みようかな?

…あっ、いたいた。
おーい、アイリさーん!

アイリ:
あら、ジャン様。
先日は精気をごちそうさまでした。

ジャン:
あ、いえいえ…
(本当はシチューをごちそうしようと
思っただけなんだけど…)

アイリ:
どうです? あれから体調は崩されて
いませんでしょうか?

ジャン:
はあ…ちょっとだけ疲れが残り
ましたけど、今はもう大丈夫です!

アイリ:
それはなによりですわ。

ジャン:
で、でも…アイリさんって、いつも
ああいう風に精気を吸っているんですか?

アイリ:
? いいえ。美女から精気を吸う
時には、もっと違う方法で吸いますわ。

せっかく美女から精気をいただく
からには、楽しまないともったいない
ですもの。

ジャン:
た…楽しむ…?

アイリ:
そう。単に精気を吸うのではなく、
たっぷりと恐怖を味わわせて…

美女の悲鳴を聞きながら、
いろいろな方法で精気を
吸い取るのです…うふふ。

ジャン:
(う…アイリさんの笑み、なんだか
いやらしいような怖いような…
いったい、どんな吸い方を…?)

と、ところで、精気を吸うのは
ともかく、恐怖って…?
そんなことが必要なんですか?

アイリ:
あら、当然ですわ。獲物の精神状態に
よって精気の味わいも違いますし…

…それになにより、美女が恐怖に
おののく様子を見るのって、とっても
楽しいでしょう…ふふっ。

ジャン:
そ、そういうものですか?

アイリ:
ええ…美しい顔が苦悶に歪み、
抵抗できない状態で私に精気を
吸い取られていく…

…ああ、想像するだけで興奮してきて
しまいますわ…

ジャン:
…あ、あの〜…せめて、恐怖を
与えるのは勘弁してあげては…?
精気をいただくだけで…

アイリ:
あら、そんなの、お料理をせずに
生でお肉を食べるようなものですわ。

やっぱり、きちんと味付けをしないと
おいしくありませんでしょう?

ジャン:
は、はあ…

アイリ:
美女に恐怖を味わわせる時は
私の手下の低級霊ブラザーズに
動きを封じさせるのですけれど…

今後はジャン様にもお手伝い
いただけるのですよね?
よろしくお願いいたします。

ジャン:
えぇっ!? ぼ、僕も女の子を
いじめる手伝いを…!?

アイリ:
何か…ご不満でも?

ジャン:
いえいえ、そんなことは!

アイリ:
そうですか。
では、私は誰か獲物…美女たちの
様子を見てきますわね。

ジャン:
は、はい! 行ってらっしゃい。
あの〜、実行する前には僕にも
相談してくださいね〜?

アイリ:
了解ですわ。
それではごきげんよう。

ジャン:
う〜ん…やっぱりアイリさんを
野放しにしておくのは危険だな…

女の子が怖い目にあわされないよう、
ばっちり監視していこう!

…でも、アイリさん、美女たちから
どんなふうに精気を吸うのかなあ…
ぐふふふふ…

…っと、いかんいかん、妄想を楽しんで
いる場合じゃない。女の子たちの身は
僕が守り切ってみせるぞ!

第七回

ジャン:
はあ…アイリさんに付き合わされる
ようになって以来、疲れること
ばっかりだよ…

アイリさんともっと仲良くなりたいのに、
なかなか距離も縮まらないし…

僕の計画では、アイリさんと親密な仲に
なって、あのメイド服に包まれた
カラダを…むふ、むふふふ…

…なんて妄想してても始まらないか…
はあ…もっとこう、仲良くなる機械と
いうか、スキンシップというか…

アイリ:
あら、どうなさいました? ジャン様。
ため息などついて。

ジャン:
あっ、アイリさん。
いや、別になんでもないんですけど…

アイリ:
そうですの? でも、ため息をつくと
幸せが逃げると申しますわ。
元気をお出しください。

ジャン:
あ、ありがとうございます…
アイリさんはいつも元気ですよね。
…レイスが元気ってのもおかしいけど…

アイリさんって、普段、御主人様の
お世話ばかりでお休みなんか
ないんでしょう? よく体がもちますね。

アイリ:
私はお仕事を楽しんでいますもの。
すべては気の持ちようですわ。

ジャン:
そんなものですかねえ…

アイリ:
まあ、それでもたまには
疲れを感じることもありますけど…

ジャン:
本当ですか? だったら、僕が
アイリさんの肩をもんで
差し上げますよ!

アイリ:
えっ…そんな。そこまでして
いただくわけには…

ジャン:
いいですから、いいですから。
たまにはアイリさんもお世話される
側になってください。

アイリ:
…それじゃ、お言葉に甘えて
お願いしますわ。

ジャン:
はいっ!

(…よし。強さでも料理でも
アイリさんに男の良さをアピールする
ことはできなかったけど…)

(ここはひとつ、僕の優しさで
アイリさんとの仲を深めてみせるぞ!)

では始めます…
…おぉ、柔らかい肩…
アイリさん、あんまりこってませんね?

アイリ:
そうですの? でも、とっても気持ち
いいですわ…

ジャン:
喜んでもらえてなによりです!
では、モミモミモミモミ…

アイリ:
ああ、上手ですわ、ジャン様…

ジャン:
そうですか? じゃあ、もっと
前の方も…って、おおっ!

アイリ:
? どうしましたの?

ジャン:
い、いえ、なんでも!

(…さっきは気づかなかったけど、
ここからだと、アイリさんの、む、
胸の谷間がばっちり見える…!)

(ぼ、僕の指先のちょっと下に
アイリさんの胸が…!
…ハッ! そうだ!)

(この状況なら『手が滑った』と
言えば、胸の中に手を入れても
事故で済むかも…!?)

(…よし! 思い立ったら実行だ!
ジャン、いっきまーす!)

???:
(ギュッ)

ジャン:
へっ!? …あ、あれ…!?
からだが、動か…ない…?
な、なにかが僕の体にまとわりついて…

アイリ:
あら…ジャン様、どうされました?
低級霊たちと遊んだりして。

ジャン:
えっ…ぼ、僕の動きを封じて
いるのって、アイリさんの配下の
低級霊ブラザーズっ!?

アイリ:
ええ。…どうしたのかしら。
どうやら、私の身の危険を感じた
ようですが…

…ジャン様、あなた、私になにか
危害を加えようとされましたかしら?

ジャン:
い、いいえ! めっそうもない!
それどころか、僕はアイリさんに
キモチイイことをしてあげようと…

アイリ:
……

ジャン:
ハッ…! しまった!
思わず正直に答えてしまった!

アイリ:
…どうやら、低級霊ブラザーズに
お礼を言わなければ
ならないようですね…

ジャン:
そ、そんな! 誤解です!
僕がキモチイイことと言ったのは、
肩揉みのことで…

アイリ:
お黙りなさい。あなたのその
いやらしい表情が、なによりの
証拠ですわよ。

…低級霊ブラザーズ。
私がこの場を離れるまで、
ジャン様を締め上げておきなさい。

ジャン:
え…う、うぎゃああぁぁ!
(ミシミシミシ…)

アイリ:
身動きできない恐怖と痛みを
味わいながら、そこでしっかり
反省することですわね。

ジャン:
い、痛たたたた、痛いってば〜!
うぅ…見た目はかわいくても、さすがは
死霊…アイリさんはやっぱり怖い…

て、低級霊ブラザーズさんたち?
君たちも、もっと手加減を…

い、いぎゃあぁぁぁ〜!
今! 今なんか、ポキッと鳴ったよ!?
ギブ! ギブアップ! 助けてぇ〜…!

第八回

ジャン:
…ええと、アイリさんは
どこにいるんだろう?

急に呼び出しなんて…
また危険な目に
あわされないといいけど…

…いや、待てよ…?
だれもいないところに僕を
呼び出すということは…

もしかして、アイリさんもようやく
僕の魅力に気づいたのかもっ!?

そう、アイリさんだってやはり女性。
男である僕の精気の味が
忘れられなくなって…

(ここから妄想キスシーン)

アイリ:
あなたの精気が…
いいえ、あなたのすべてが欲しいですわ。

わたくしのすべて、受け取ってくださいます?

わたくしの心は、あなただけのもの。
今日からは、あなた専属のメイドとして、
ご奉仕させていただきますわ。

ふつつか者ですけど、
よろしくお願いしますね。
ご主人様。

(ここから現実)

ジャン:
あ、アイリすゎーんっ!

アイリ:
きゃ! び、びっくりしましたわ…
なんですの、いきなり大声で。

ジャン:
あ、アイリさん…
そこにいたんですか。

アイリ:
私があなたを呼んだのですから
当然でしょう?

ジャン:
あ、そうですよね。
それで、僕を呼んだ用というのは…?

アイリ:
ああ、そうそう。
今までさんざんジャン様には
お世話になりましたから…

ちょっとお礼をさせて
いただこうと思いまして。

ジャン:
えっ…お礼だなんて…
僕まだ心の準備が…
でもまあ、せっかくですし…ぐふふ。

アイリ:
…じゃあ、目を閉じて、手を後ろに
回して…?

ジャン:
え…手を後ろに…?
変わったやり方ですね。
でもまあ、アイリさんが言うなら…

アイリ:
…さあ、目を開いてください。

ジャン:
えっ…まだなにもしてないのに?
目を開きながらするんですか?
なんだか照れるなあ…

…って、あれ…?
動け、ない…?
これってもしかして…

アイリ:
低級霊ブラザーズに拘束
させましたわ。これで動けませんわね。

ジャン:
えぇっ!? なんでそんなことを?
ひどいですよ、アイリさん!

アイリ:
おだまりなさい。
あなたときたら、私の精気集めに
役に立つどころか…

いやらしいことまでしようとして、
邪魔にしかなっていなかったじゃ
ありませんの!

おかげで最近、私のお腹は
ぺこぺこですわ!

だから今日は、徹底的に
ジャン様の精気を吸わせて
いただきますわ!

…言っておきますけど、今日は
この間みたいに手加減はしませんわよ?

本当に遠慮なく吸わせていただきます。
したがって、ジャン様の健康は
保証できませんわね!

ジャン:
ひ、ひえ〜! そんなあ!
ちょ、ちょっとは僕の体のことも
考えてください!

アイリ:
おだまりなさい。
命が惜しければ、せいぜい
気をしっかり持つことですわ。

美女でないのが残念ですけれど、
久々の食事ですわ。
では、いただきます…(かぷっ)

ジャン:
ひぎゃぁ〜!

アイリ:
んぐ、んぐ…
男にしてはなかなかの味ですわね。
空腹は最高の調味料ですわ。

今日は食べ放題コースですわ!
たっぷりいただきますわよ!

ジャン:
た、食べ放題なんて認めてません!
助けて〜!

アイリ:
うふふ…パーティーはまだ
はじまったばかり。
夜はまだまだ長いですわよ…?

ジャン:
うぅ…そのセリフ、もっと別の状況で
聞きたかったです…

アイリ:
さあて…いよいよ
本格的にいただきますわ
(がぶぅっ)

ジャン:
あぁ…アイリさんの唇の感触が…
気持ちいい…けど、駄目だ…
気が遠く…なる…(がくっ)




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Last-modified: 2011-08-07 (日) 09:42:05 (4639d)