九尾の狐

暫定的に"九尾の狐"のデフォルト名"天狐"で載せる事にします。

第一回

ジャン:
……ううっ…まさか散歩してたら、
こんな場所に迷い込むだなんて…

今にも何か出てきそうでおっかな…

???:
そこの者、ここで何をしておる。

ジャン:
ヒィッ!?
な、ななな、何今の声…!?

天狐:
なんじゃ、おぬしか……

ジャン:
天狐…さん…?
どうしてここに…?

天狐:
それはこちらが先に聞いておることじゃ。

ジャン:
……僕は散歩してたら、
迷ってしまって…

天狐さんは、
どうしてここにいるんですか?

天狐:
ワシかえ?
ワシは幼き者たちと
戯れておっただけじゃ。

ジャン:
幼い…って、こんなところに
ちいさな子供がいたんですか?

天狐:おぬしが考えているのは
人間の子どもじゃろう?
ワシが言うておるのは、狐の方じゃ。

ジャン:
あ〜、天狐さん、
元は普通の狐だったんでしたっけ?

天狐:
左様じゃ。
いかにも、元はワシも
小さな子狐の1匹じゃった。

じゃから、このあたりから
鳴き声が聞こえた時に、
つい懐かしくなってしもうての。

ジャン:
じゃあ、その頭の上にある耳も、
本物なんですよね?
髪飾りの一種とかじゃなくて?

天狐:
何じゃ? ワシを疑っておるのか?
何なら触ってみるがよい。

ジャン:
……えっ……いいんですか…

天狐:
いいも何も、
ワシがよいと言っておるのじゃ。
はよう触って、本物だと確認せんか。

ジャン:
それじゃあ…お言葉に甘えて、
失礼します…

天狐:
……んっ。どうじゃ、
血も通っておるじゃろう?

ジャン:
そうですね。
あったかくて、それにモフモフしてて、
触り心地がいいです。

こう、ずっと触っていたいような、
そんな気分になりますね…

天狐:
これで…んっ…わかったじゃろう?
ワシの…ふぁっ…耳が…
本物じゃということに…

ジャン:
はい、よくわかりました……

それにしても……はぁ…はぁ…
触ってて気持ちいいですよ。この耳……
はぁ…はぁ…

天狐:
……それでおぬし、
いつまで……ひゃっ…
ワシの耳に触っておる……んぁっ…

さっきから…ぁんっ…
ずっと、くすぐったい…んぅっ……
のじゃが…

ジャン:
……はぁはぁ……できれば、
もうしばらく……はぁはぁ…

第二回

ジャン:
天狐さん?
川の前で何してるんですか?

天狐:
何じゃ、おぬしか。ワシに何の用じゃ?

ジャン:
いえ、たまたま通りかかったんで、
声をかけてみただけです。

天狐:
たったそれだけのことか。
それはそれで、何ともつまらんのう。
今しがた眺めていたこの川と同じじゃ。

ほれ小僧、何か余興でもないのか?

ジャン:
……こ、小僧って…余興って…

天狐:
ないならないで、
何か酒のつまみにでもなりそうな
愉快な話でもないのか?

ジャン:
……じゃあ今、思ったんですけど、
どうして天狐さんって、
言葉遣いがこう…

天狐:
何じゃ、古臭いとでも言いたいのか?

ジャン:
そういうわけじゃないんですけど…
ちょっと、時代がかっている感じが
気になって…

天狐:
……ふむ。そういうことか…
それなら、説明は簡単じゃな。

それはのう、
ワシがおぬしら人間と違って、
遥に長い年月を永らえておるからじゃ。

ジャン:
100年とか、200年くらい
ってことですか?

天狐:
その程度、小僧小娘とそう変わらんのう。
ワシはかれこれ、
1万年以上は永らえておる。

もっとも、途中で数えるのも
面倒になったゆえ、
正確なところは覚えておらんがの。

ジャン:
……そ、そんなに生きてたんですか、
天狐さん…

どうりで話し方も
今の人と違っているわけだ…

天狐:
なに、崇め奉って、
存分に敬ってもよいのじゃぞ?

ジャン:
じゃあ、天狐さんて、
すっごいおばあちゃんなんですね?

天狐:
…………なんじゃと?
小僧…もう1度言ってみよ?

ジャン:
……いや、だから…
そんなに長い間生きてたら、
もう立派過ぎるおばあちゃんだって…

天狐:
…………おぬし、
なかなかいい度胸じゃのう…?

ジャン:
……あの、天狐さん?
何だか顔が怖いんですけど…

天狐:
夜道を歩くときは、
せいぜい気を付けるがよい……
このようにのう?

ジャン:
ひっ!
な、なんで攻撃してくるんですか!?

天狐:
それは自分の胸に聞くのが
一番早いんじゃないかのう?

長い時間を永らえてるワシも、
おぬしからしたら『年寄り』なんじゃ。
聞くまでもなかろう?

ジャン:
よく分からないけど、謝りますから、
攻撃しないでくださいってば〜〜〜っ!

第三回

ジャン:
あれ、天狐さん、寝ているのかな?

天狐:
……ん? おや、小僧か?

ジャン:
(……そういや、あの髪型、
かなり独特な感じだよな…
毎日、どうやって整えてるんだろ…)

天狐:
どうしたのじゃ?
ワシの顔に何かついておるのか?

ジャン:
いえ、そうじゃないんですけど…

天狐:
何じゃ、歯切れが悪いのう。
はっきり言うてみい。

ジャン:
……あの、天狐さん?
その髪の毛って一体、
どうなってるんですか?

天狐:
ワシの頭に付いておる、
この房のことを言っておるのかえ?

ジャン:
はい。ちょっと、
尻尾にも見えるんですけど、
そういう風にしてあるだけですよね?

束ねたものを、
その尻尾みたいなのにしまっている
っていうことで、いいんですよね?

天狐:
いいや、これはワシの尾の一部じゃが?

ジャン:
……えっ……
な、なんで頭に尻尾があるんですか?

天狐:
尻に9本も付けておると、
歩きにくいのでのう。

バランスを取るため、
頭に付けておるのよ。

尻と頭で、ちょうど九尾よ。
ワシが九尾の狐であるゆえにのう。

ジャン:
…………っぷ!
髪の毛が尻尾って…!!
合わせて九尾って!!

天狐:
…………何じゃ?
何かおかしなことでも言ったかのう?

ジャン:
ぷぷっ! あはははっ!
天狐さん、冗談面白いなぁ、もう!
あははっ!!

天狐:
……小僧、おぬし…
ワシを小馬鹿にしとるのか?
このワシを…

ジャン:
ヒイ〜〜〜〜ッ!
な、何をするんですか!?

天狐:
……問答無用じゃ。
おぬしは少々痛い目を見て、
反省するがよい。

ジャン:
なんでこうなるの〜!

ギャーーーッ!
天狐さん、止めてーーーっ!

第四回

ジャン:
あれ、天狐さん?
こんなに暗いのに空なんか見て、
何かあるんですか?

天狐:
月見じゃ、月見。
風情の分からん小僧じゃのう。

ジャン:
あー、そう言えば、
今日は月がよく見えますよね?

天狐:
うむ。おぬしもたまには
月見とでも洒落込んでみたらどうじゃ?

そうしてゆっくりするのも……
悪くはなかろう?

ジャン:
……そうですね。のんびりして、
自分なりにリラックスする時間も、
今は必要かもしれないですね。

天狐:
じゃろう? 最近はおぬしも、
少々気が張ってたのではないか?

まあ今宵くらい、
先々の苦労も忘れて、
安らかに過ごすのもよかろう。

ジャン:
はい。僕もそうすることにします。

ジャン:
それでですね、天狐さん…
お嬢様ったら、ひどいんですよ〜。

まったくその通りなんですよ!

……はぁ〜…
天狐さんだけですよ、
僕の話をちゃんと聞いてくれるの…

天狐:
くくくっ。
こうも簡単に化かされて、
自分の杖に話しかけるとは…

なんとも間抜けな奴じゃ。
これはなかなか、
今後も化かし甲斐がありそうじゃの〜。

第五回

ジャン:
……こないだはヒドイ目に遭ったな…

まさか、話の途中から、
天狐さんに
化かされてただなんて…

う〜ん……これも精神修行の一環、
という感じに開き直っておいた方が
いいのかなぁ…

天狐:
……小僧、おぬし、
何をさっきからブツブツと
言っておるのじゃ?

何か、珍妙な熱病にでも
かかっておるのかえ?

ジャン:
天狐さん!?
今の聞いてたんですか!?

天狐:
ここに来たら、聞こえてきただけじゃ。

そもそも、おぬしが勝手に
話しておったのじゃろうに。

ジャン:
……それはそうですけど…

天狐:
ところでおぬし、その包みは何じゃ?
なにやらワシの好きな匂いがするぞい。

ジャン:
ああ、これですか。
天狐さんが好きらしいって聞いて。
もしよかったら、どうぞ?

天狐:
こ、これは!
ワシの大好物のお揚げではないか!

ジャン:
半信半疑だったんですけど、
本当だったんですね?

天狐:
うむ、左様じゃ。
では、さっそくいただくぞい。

……もぐもぐ……うまいのう……
もぐもぐ…うまいのじゃ…

ジャン:
(……こんなに嬉しそうに食べて……
本当に好物だったんだなぁ…)

(僕ともこれを機に、
もう少し話してくれるように
なればいいんだけど…)

天狐:
……ふぅ……よう食った…
満足、満足……

次も持ってくるのじゃぞ?
ではまたの。

ジャン:
え、はい。そうします……
って、ええっ!?

お、お揚げ食べたら、
即帰っちゃうんですか!?
冷たいなあ…

第六回

ジャン:
あー、いたいた。天狐さん。

こないだ言われた通り、
今日もちゃんと持ってきましたよ?

天狐:
なんとまぁ、律儀な奴じゃのう。
ワシとしては、お揚げが食べれて
満足じゃがの。

大好物のお揚げ、ありがたく、
ちょうだいしておくことにするかのう。

今回も悪いのう。
わざわざ、ワシの大好物を
持参させてしもうて。

ジャン:
いえいえ。これくらい、
お安い御用ですよ。

天狐:
そうは言ってものう。
ワシにもお揚げの礼をする
義理があるでな?

すぐにとは言わんが、近いうち、
何かしらの形で礼をさせてもらうぞい。

ジャン:
そんなに気にしないでいいですよ。

僕は天狐さんと、
少しでも仲間として打ち解けられたらって
思ってるだけですから。

天狐:
そうか…? ふむ…そういうことならば…
ワシもおぬしと仲間づきあいをするに…
やぶさかではない…かの。

ジャン:
え! ホントですか!?

天狐:
ああ。本当じゃ。その証拠に…
ワシの尻尾を握ってもよいぞ。

ジャン:
尻尾を…ですか? それは、確かに
もふもふして気持ちよさそうですが…
何か特別な意味が?

天狐:
うむ、これはの、
ワシら狐族の間で親しいもの同士が
親愛の情を表すあいさつじゃ。

まあ、お前ら人族でいうと、
握手のようなものじゃな。

ジャン:
なるほど…握手ですか。
でも…どの尻尾を握れば?

天狐:
ん?ああ、どれでもかまわん。
好きなのを握るがよい。

ジャン:
わかりました。では…これで!
よろしくお願いします!

天狐:
はぅ……っ! くぅ……んっ!
ば、ばかものぉ…! い、いきなり…
握るでなぃ…はぁあん…

ジャン:
ご、ごめんなさい! 手、放しますから!

天狐:
だ、だめじゃ…小僧、手を放すな…
尻尾を…尻尾を優しくこするのじゃ…
ふぁああぁん!

ジャン:
天狐さん!?

天狐:
は、早く…早く…っ! ぁあああ…
あうぅんっ!

ジャン:
天狐さん、
尻尾が…ぴくぴく震えてますよ。
き、気持ち…いいんですか!?

わ、わかりました。もっと激しくですね?
こうですか? なんとなくわかります…

天狐:
くくくっ。
この小僧、またも簡単に化かされとるわ。

……もぐもぐ……あぐあぐ……
このじゅわっとしみだす汁と食感…
たまらんのう…

しかし、なんじゃな。
面白い見世物を見ながら食べると
普段にもましてお揚げがうまいのう。

第七回

ジャン:
……こないだも、
また化かされてしまった…

一体いつの間に、
僕は化かされていたんだろう…

でも今度こそ、
今日こそは化かされないぞっ!

天狐:
うむ。小僧、今宵もおったか。
感心じゃな。

ジャン:
ちゃんと今回も、
天狐さんの好きなお揚げ、
持ってきましたよ?

天狐:
阿呆とばかり思うとったが、
これでなかなか聡くなったものじゃな。
褒めてつかわすぞい。

毎度毎度すまんのう。
では、ちょうだいするかのう。

ジャン:
(そういや、こうやってお揚げを
渡すあたりから化かされて……
まさか!)

……はっ!
天狐さん、
また僕を化かしてますね!

天狐:
おぬし、何を言うておるのじゃ?

今日のワシは寛大ゆえ、
さようなことをする気など、
さらさらないのじゃが?

ジャン:
またまた〜! 天狐さん、
いつもそうやって
僕を化かしてるんですね?

でも、今日の僕は一味違います!
今回ばかりは、そうは行きませんよ〜!

天狐:
……ふむ。
何を言うても無駄なようじゃのう…

ジャン:
そうやって優しいフリをしてるのも、
すでに僕を化かしに
かかってるからですよね?

天狐さんが、
素直にお礼を言うとは思えないですし!

天狐:
……何じゃと…?
小僧、ワシを馬鹿にしておるのか?

ジャン:
馬鹿にだなんてしていませんよ?
ただ、今の化かされた状態を
なんとかしたいだけです。

天狐:
……ほほう……ならば、
その間抜けな目を……
はよう覚まさせてやらんといかんなぁ…

ジャン:
うぎゃっ!

あ、あれ? なんか痛い…
えっ、ええっ!?
これって、夢じゃないの!?

天狐:
このたわけめが!
最初から『化かしておらん』と
言うておるじゃろうに!

これから十分に痛い目を見て、
反省するがよい!

ジャン:
ぎゃ〜〜〜〜〜っ!!
ば、化かされてなかったの〜〜〜〜っ!

天狐:
待たんか小僧!
このワシが直々に、
たっぷりと折檻してくれるぞ!

ジャン:
うわ〜〜〜っ!
天狐さん、
ごめんなさい〜〜〜〜〜い!!

第八回

ジャン:
……天狐さん…
僕なんか呼び出して、
どうする気なんだろう…

ま、まさか……こないだ、
化かされてないのに、化かしてるって
言って、怒らせちゃったから…

そのおしおきの続きなんじゃ…
ど、どうしよう…

(ここから妄想)

天狐:
ふむ。定刻通りに来ておるようじゃの、
小僧。

ジャン:
すっ、すいませんでした!

天狐:
どうしたのじゃ? おぬし、
ワシに何か謝るようなことをしたのか?

ジャン:
こないだ、
化かされてない時に
怒らせてしまったので!

天狐:
ああ、そのことか。
それはもうよいのじゃ。
十分に反省してもろうたからのう。

ジャン:
……そ、それじゃ…
今日はこないだの続きじゃ
なかったんですか…?

天狐:
終わったことを
今になって続けてどうする?

おぬしはほんに、
可愛げのある阿呆じゃのう。

ジャン:
それなら、今日は何で
僕を呼び出したんです?

天狐:
まだ気付かんのか?
おぬしは阿呆な上に、
鈍感な奴じゃのう?

まぁ、時おり化かして
からかうこともあるが、
何度も会って、話をしておるのじゃぞ?

ワシがおぬしのことを気に入っておる、
ということじゃ。

そのくらい、男なら自分で気付かんか。
この馬鹿たれが。

ジャン:
……そ、それって……
もしかして、本当に天狐さんが……
僕のことを…?

天狐:
……とことんまで鈍い奴のよう…
まったく……

ワシが目をつぶっている間だけじゃぞ…
しかし、永らく生きてきたが、
こんな気持ち…久しゅうなかったわい…

ジャン:
は、はいぃーっ!

(キスシーン)

天狐:
まだか?はよせい…
いつまで待たせるつもりなのじゃ?

男ならいさぎようせんか
せっかくワシがここまで積極的になっておるのじゃぞ?

小僧、待ちくたびれたぞ
さあ、ワシの熱く濡れた唇に、おぬしのそれを…

お揚げよりも甘美な味、今すぐ確かめさせるのじゃ

(ここから現実)

ジャン:
……うーん……天狐さーん…

天狐さんって、
結構抱き心地が良いんですね〜…
それに良い匂いがします…

こんなに色っぽいと……
僕もう、たまらないですよ……
むちゅ〜っ…

天狐:
かははははっ!
こやつ、また化かされおって!

ほんに化かし甲斐のある奴じゃて!
めんこくてたまらんのう!

ジャン:
むちゅ〜っ! 天狐さぁ〜ん……




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Last-modified: 2011-09-18 (日) 15:05:43 (4598d)