アリス
第一回 †
ジャン:
ふあ〜…なんだか眠れないなあ。
…ん? あれは…?
アリス:
…んしょ、っと…ナイスキャッチ!
誰にも見られてないわよね…?
ジャン:
アリスさんだ…どうしたんだろう?
なにか、空から落ちてきたものを
受け取ったみたいだけど…
アリス:
…!?
そこでのぞいてるのは誰っ!?
ジャン:
わ、わあっ! 撃たないでっ!
僕です、ジャンですぅっ!
アリス:
なんだ、ジャンか…
じゃあ撃っても問題なかったわね。
ジャン:
えっ、今なんて…
アリス:
別に?
ジャン:
そ、そうですか…?
それより、ナイスキャッチって何です?
何か落ちてきたんですか?
アリス:
えッ? そ、それは…!
あ、あたし、そんなこと言ってた?
ジャン:
…ええ。しっかりと。
アリス:
…な、なによっ!
のぞきなんて趣味が悪いわよ!?
ジャン:
え!?
いや、別に僕はのぞきなんて…
アリス:
言い訳は見苦しいわよ!?
…とにかく、あたしは行くからね!
ジャンのバーカ! バーカ! スケベ!
ジャン:
あ、アリスさん!? …行っちゃった…
…しかも、無意味に罵倒まで
されてしまった…
結局、アリスさんは何を
していたんだろう?
まあ、仕方がない。
次の機会があったら聞いてみよう…
第二回 †
アリス:
…よし、誰にも見られてない…
今のうちに、そーっと…
ジャン:
…あれ? アリスさん…?
また何かコソコソしてるぞ…?
この間のこともあるし、少し気になるな。
追いかけてみるか…
…あっ、いたいた。
なんだろう、小さな傘みたいな
ものをキャッチしているぞ…?
アリス:
…よっ、と!
よし、今日もナイスキャッチ!
ジャン:
あの、アリスさん。
いつもひとりで何してるんです?
アリス:
ひゃあっ!?
じゃ、ジャンっ!?
どこから湧いて出たの?
ジャン:
そんな人聞きの悪い…
僕はただアリスさんが心配で…
アリス:
…心配で、人のプライバシーを
覗きに来たってわけ?
まったく、あんたってば…
ジャン:
い、いや、僕は純粋に
仲間を心配してですね…
アリス:
…まあいいわ。
見つかっちゃったのは事実だし、素直に
諦めることにするわ。
ジャン:
えっ?
アリス:
特別に、あんただけにあたしの秘密を
教えてあげる。
その代わり、他人にはナイショよ?
ジャン:
えっ…?は、はぁ…
…で、秘密ってなんです?
アリス:
あんただけに見せるんだからね…?
光栄に思いなさいよ?
ジャン:
え、み、見せる…?
い、いったいなんですかっ!?
アリス:
これよ!
ジャン:
へ…?
こ、これは…お菓子?
アリス:
ええ。
あたしの母艦から転送させた最高級の
お菓子なんだから!
ジャン:
…は、はあ…お菓子ですか。
でも、なんでわざわざ隠してたり…?
アリス:
あたしが今持っている携帯用転送装置は、
一度に送信できる量に限界があるの。
だから人に見つかるとまずいでしょ?
限られたお菓子をめぐって
血みどろの戦いが繰り広げられたら
大変じゃない?
ジャン:
そ、そうかなあ…
そこまでするのはアリスさんだけでは…?
アリス:
なんか言った?
ジャン:
いえ何も。
アリス:
とにかく! 見つかっちゃった以上、
あんたにもときどきお菓子を分けたげる。
その代わり、絶対に秘密だからねっ!?
ジャン:
は、はあ〜い…
アリス:
はい、じゃあ今日の取り分ね!
ジャン:…キャンディー一粒…?
…あの〜、アリスさん。あなたが今
両手に抱えてるお菓子は…?
アリス:
残りは全部あたしのものよ。当然でしょ。
…ま、あんたが秘密を守り通せたら
少しずつ分け前を増やしてあげる。
もっとお菓子が食べたかったら、あたしに
信用される男になることね。…じゃあね!
ジャン:
あ、アリスさん!
…ああ、また行っちゃった…
別にコソコソすることないのに…
でもまあ、せっかくのアリスさんとの
約束だもんな。
秘密にしておいてあげよう。
…あ、このキャンディー、
本当に美味しいや…
第三回 †
ジャン:
うう〜ん…むにゃむにゃ…えへへ…
…君たち、僕にキスしてほしいのかい?
じゃあ、ひとり5回までだよ…?
アリス:
どーいう夢を見てんのよ、あんたは。
ジャン:
痛っ!
…ハッ、ま、まさか…
今のは、夢…?
アリス:
夢に決まってるでしょ!
…あんたってば、寝ている最中でも
いかがわしいのね。
ジャン:
あれ、アリスさん…?
どうしたんですか、
僕に何か用でも?
アリス:
何か用? じゃないわよ。
せっかく誘いに来てあげたのに。
ジャン:
えっ、お誘い…?
そ、それはもしや、でで、デート…?
アリス:
違うっ! 今日は母艦からのお菓子の
転送日なの!
だからあんたにも分けてあげる。
ジャン:
あ、ああ、そっちのほうでしたか…
アリス:
さあ、さっさとついて来なさいっ!
ジャン:
そういえば、
なんでいつもあの傘みたいな
…えーと、パラシュートでしたっけ?
なんでわざわざ、あれでお菓子を
転送してもらってるんです?
普通に受け取ればいいのに。
アリス:
携帯用の転送装置は、座標が少し
ズレちゃうのよ。
だから空中に転送させてるわけ。
間違って壁の中になんか転送されたら
取り出せないでしょ?
ジャン:
なるほど…
アリス:
…あっ! 来たわよ?
ほら、さっさとキャッチして!
ジャン:
えっ、僕が?
アリス:
そのためにあんたを連れてきたのよ!?
ほら、お菓子が欲しかったら
さっさとキャッチしなさいっ!
ジャン:
え、でも、パラシュートがガケの
ほうに落ちていくんですけど…
アリス:
だったらなおさら大変じゃない!
ほら、早く行きなさい!
ジャン:
ちょ、ちょっと、押さないで!
アリスさん!
…押さないで! 絶対に押さないでっ!
アリス:
…つまり押せってことね? 了解。
ジャン:
あ、いや! そういうお約束な
意味ではなくて…わ、わぁ〜あぁ…
アリス:
ご苦労さま、ジャン。
ジャン:
い、生きてる…僕、生きてる…?
…か、体の震えが止まらない…
アリス:
何を大げさな…下に生えてた木が
クッションになってくれたじゃないの。
ジャン:
そ、そんなの偶然じゃないですか!
ガケから落ちた時、もうダメだと
思いましたよ…
アリス:
わかったわよ。働きは認めるわ。
…はい、これ。
ジャン:
板チョコ…?
命を賭けた仕事の報酬が板チョコ…
アリス:
何よ、数に限りがあるんだから
贅沢言わないで。それに、このチョコ
だって高級品なんだから。
ジャン:
わかりました、わかりましたよ…
アリス:
じゃ、今日はこれで。
また次もお願いね〜!
ジャン:
う、うう…
まだ体の震えが止まらない…
第四回 †
ジャン:
アリスさんのお菓子回収に
つき合わされて酷い目にあった…もう、
アリスさんにつき合うのはやめよう…
アリス:
あっ、ジャン、いた!
出かけるわよ! ついて来なさい!
ジャン:
ひえぇ! も、もう勘弁してくださいっ!
アリス:
なによ、その言い方は。
お菓子は分けてあげてるでしょ?
ジャン:
そ、そりゃ、アリスさんのお菓子は
美味しいけど…でも、命の危険までは
おかしたくないです!
アリス:
だったらなおさら手伝いなさいよ!
危ない場所にお菓子が転送されてたら
あたしまで危険なのよ?
ジャン:
そ、そう言われましても…
アリス:
…な〜んだ、残念。
ジャンって案外、欲がないのね〜
あたし、今日は覚悟を決めてきたのに。
ジャン:
へ? それはどういう意味…?
アリス:
今日は近くの森にお菓子が転送されるの。
森の中だから、もしかするとお菓子が木に
引っかかっちゃうかもしれないでしょ?
だから恥ずかしいのを我慢してジャンに
肩車してもらおうと思ったのに…
ジャン:
か、肩車!?
(アリスさんを肩車…ということは、
太ももが…そして、あんなところが僕に
密着しちゃったりして…!?)
あ、あの、僕やっぱり行きますっ!
行かせていただきますっ!
アリス:
あら、いいのよ、無理しなくて。
ジャン:
いえいえ! 僕もアリスさんのお菓子を
食べるの楽しみにしてたし!
ぜひご一緒させてくださいっ!
アリス:
そう? じゃあ、付き合って
もらおうかしら?
ジャン:
はいっ!
…はあ、はあ…あんなに高い木に
引っかかっているとは思わなかった…
アリス:
あんな高い場所じゃあ、
とても肩車の出番はなかったわねー。
ジャン:
うわーん、騙されたよォーっ!
アリス:
騙してないってば!
パラシュートの行き先なんて、
あたしにだって読めないんだから。
ジャン:
う、うう…あんまりです…
太もも…僕の太ももぉ…
アリス:
変なこと言いながら泣かないでよ…
あんた、もう少しさわやかキャラを
目指そうとか思わないわけ?
ジャン:
そんなこと言われても…いじいじ…
アリス:
まったく…あんたの分け前、ここに
置いていくからね?
とにかく、今日はどうもありがと。
ジャン:
あ、はい。…今日はクッキーですか…
命がけの報酬がこれだよ…
…あれ? でもさっき、アリスさんは
ありがとう、って言ってたような…?
今まではそんなこと言わなかったはず…
少しずつだけどアリスさんに信頼されて
きているのかな…?
この調子でもっとアリスさんと仲良く
なれると嬉しいけど…
…僕の体、それまでもつかなあ…
第五回 †
ジャン:
ふああ…なんだか今日は疲れ気味だなあ。
最近、ちょっと無理をしすぎたかも…
たまにはのんびりしないとな。
アリス:
あっ、ジャン! いいところに!
ちょっとつき合ってくれない?
ジャン:
うわ、アリスさん!?
…ゆっくりしようと思ってたのに…
アリス:
なにをブツブツ言ってるの!
早くしなさいっ!
ジャン:
は、はい〜!
…で、今日はなんの用です?
アリス:
安心して。ジャンはそこで
おとなしく座ってるだけでいいから。
ジャン:
え…?は、はぁ…
アリス:
動かないでね…?
ジャン:
え? …あの、アリスさん…?
それはアリスさんご愛用の武器…では?
たしか“けんじゅう”とかいう…
アリス:
そうよ? だから動かないでね。
ちょっとでも動いたら…
…二度と動けなくなるわよ?
ジャン:
えっ、あの、ちょ…!
アリス:
ふっ!
ジャン:
ひええええっ!?
アリス:
よし、狙い通りね。
もう目を開けなさい、ジャン。
どこにも当たってないから。
ジャン:
…で、でも…頬のすぐ横を
かすめていったんですけど…
アリス:
そういう風に狙ったんだから
当たり前でしょ?
ジャン:
…あの〜、どうしてそんなことを…?
アリス:
練習よ、練習。
戦いが続くとメンテナンスも
甘くなるしね〜。
たまには適当な標的を使って
照準をチェックしておかないとね。
ジャン:
…そ、そういうのは他の標的を
使ってくださいっ!
アリス:
でも、やっぱり適度な緊張感が
必要だから…
ジャン:
て、適度じゃないです!
必要以上に緊張しましたよ!
僕がっ!
アリス:
もう…うるさいわねえ。
冗談よ、冗談。
あたしだって、ちゃんと当たらないように
計算して…あっ!
ジャン:
うわぁっ!?
アリス:
わあ、すごいすごい!
ジャン、今、銃弾をかわしたわよ!?
ジャン:
すごいすごい、じゃないです!
なんで撃ったんですか!?
アリス:
やだ、撃ったりしてないわよ。
ただの暴発よ、暴発。
ほら、確かめてみる?
ジャン:
わ、わかりましたからそれを
こっちに向けないでー!
アリス:
まったく、大げさねえ。
はい、じゃあ銃の調子もわかったし、
もう帰っていいわよ。
ジャン:
ひえぇ〜! もうこりごりだぁ〜!
アリス:
あらあら、全速力で走っていっちゃった…
それにしても…
ジャンってば、ジャンってば…
なんて、いじめがいのある子なのかしら。
このあたしの銃が暴発なんて
するわけないじゃないの。
やっぱり、ジャンと遊ぶのは楽しいわ。
これからも、いいヒマつぶしの道具として
楽しませてもらおっと!
第六回 †
アリス:
んしょ…っと。ジャン、大丈夫?
なんだかグラグラしてるわよ?
ジャン:
は、はい!
大丈夫、大丈夫ですから…
(…とは言ったものの…
本当に肩車をすることになるとは…いま、
アリスさんの太ももが僕の顔の横に!)
(楽しみにしていた瞬間だけど、
いざこうなってみると何もできない…
僕って意外と純情?)
アリス:
…あ、届いた! 取れたわよ、ジャン!
ジャン:
本当ですか? それは良かった。
アリス:
じゃあ、さっそくだけど、はい。
ジャン:
えっ…これは…マシュマロ?
アリス:
ええ。肩車で疲れたでしょ?
ジャン:
か、肩車の体勢のままで?
アリス:
いいじゃない。
肩車って景色がよく見えるし、
あたし気に入っちゃった。
ジャン:
そ、そうですか…?
まあ、僕は別にこのままでも
いいんですけど…
(…と言うか、アリスさんの柔らかい
太ももに顔を挟まれながらマシュマロを
食べるというこの行為…)
(別にいけないことはしてないのに、
なんとなくドキドキする…
うーん、クセになりそう)
アリス:
ちょ、ちょっと、ジャン。
どうしたの、よだれなんか垂らして?
ジャン:
あ、こ、これは失礼…!
アリス:
まったく…あたしのお菓子、
そんなに美味しかったの?
ジャン:
え、ええ! もちろん!
美味しいというか、
美味しい思いをしたというか…
アリス:
? 何を変なこと言ってんの?
…まあいいわ。
このままみんなのところに帰るわよ?
ジャン:
えっ、このまま?
アリス:
あたしはここでお菓子食べてるから、
ジャンはタクシー代わりになりなさい。
ハイヨー、進め、ジャン!
ジャン:
は、はいぃ〜…
アリス:
あはは、速い速い〜!
あ、でも、お菓子を食べてるんだから
あまり揺らさないでね? 舌噛んじゃう。
ジャン:
注文の多いご主人様だなあ…
アリス:
うるさい! 黙ってしたがいなさい!
ジャン:
あ痛っ…はいはい、気をつけますよ。
アリス:
よろしい。
それ、進め進め〜! あははは!
ジャン:
(…まあ、アリスさんが楽しそうだから
これも悪くないか…)
第七回 †
ジャン:
ふう…最近はアリスさんとも
仲良くなれた気がするし、危険な目にも
遭わされていないなあ…
もしかして、アリスさんも少しは
僕を意識してくれてたりして…!?
『ジャン…あたし、あなたのこと…』
…うん、ありえる、十分ありえるぞ!
アリス:
どうしたの、ジャン。
この上なくいやらしい顔で
ニヤニヤしちゃって。
ジャン:
うわあっ、アリスさん!?
べ、別にいやらしい顔なんて
してませんよ!?
アリス:
してたわよ。
犯罪スレスレの顔だったわ。
ジャン:
そ、そこまで言わなくても…
アリス:
まあいいわ。あんまり
いやらしいことばかり考えてちゃダメよ?
じゃあね!
ジャン:
あ、うん…
なんだろう、アリスさん、妙に急いで
行っちゃったけど…
確か、向こうには水場があったような…
…ハッ! 水場!?
…ということは、もしやアリスさん、
み、水浴びをするのでは…!?
あー、そういえば僕も
喉が渇いたなあ…偶然だけど、
僕も水場に行こうかなあ…うん。
あれ、おかしいな…
アリスさんはどこに行ったんだろう?
たしかアリスさんはこっちのほうに
来ていたはずだけど…
アリス:
…ふう、すっかり汚れちゃった…
やっぱり母艦暮らしじゃないと
なにかと不便よね〜。
ジャン:
あれはアリスさんの声!?
しかも、何か水音がするぞ…
アリス:
あ〜もう、汗でべとべと。
デリケートな部分もしっかり洗って
おかなくちゃ…
ジャン:
で、デリケートゾーンを洗う!?
こ、これは期待どおり…じゃなかった、
偶然にもすごい場面に出くわしたぞ!?
アリス:
うわ〜…
奥の方は、意外と汚れてるわね…
もっとこまめに洗わなくちゃ。
ジャン:
お、奥!?
いったい、どこの奥なんだ!?
アリス:
うん、だいぶキレイになったわ。
すべすべで、いい肌触り…
ジャン:
ああ、アリスさんの肌…
僕も頬擦りしたいっ!
もう我慢できない!
ちょっとだけ覗いちゃおう!
アリスさんはいったい、どんな部分を
洗ってるのかな…!?
アリス:
…よし!
すっかりピカピカね、あたしの拳銃!
ジャン:
…って、武器の手入れかーい!
アリス:
きゃあっ!? ジャン!?
どうしたの、いきなり!?
ジャン:
なんで武器なんか洗ってるんですかーっ?
うわーん、僕のドキドキを
返してくださーいっ!
アリス:
なんでって、武器の手入れを
念入りに行うのは当然でしょ!?
命を預ける相棒なんだから。
ジャン:
うう、それにしても、あんまりだあ…
だいたい、鉄の塊を水洗いするって…
錆びちゃうじゃないですかぁ…
アリス:
いいじゃないの。あたしの銃なんだから。
あんたが気にすることじゃないでしょ。
じゃ、あたしは行くからね?
ジャン:
うぅ…期待したのに…
アリス:
…ふう、危なかった。
まさかジャンがいたなんてね。
銃の整備の前に
水浴びを済ませておいてよかった。
危なく見られちゃうとこだったわ…
第八回 †
ジャン:
なになに…
『夜、ひとりで来てください』…?
アリスさん、どうしたんだろう?
こんな手紙でわざわざ呼び出して…
…いや、待てよ。
最近、僕とアリスさんの距離は少しずつ
縮まっている気がするし…
こ、これは、これはまさかの
告白タイム…!?
…あ、ありえる!
しかも、こんな夜にふたりきり…
これは…告白だけで
終わるはずがないっ!
☆☆☆☆☆EGK☆☆☆☆☆
アリス:
…ジャン? 目を閉じて歩いてると
危ないわよ?
ジャン:
へっ…? うわっ!
ジャン:
いてててて…
木とキスしちゃったよ…
アリス:
お間抜けねえ。
夜道では気をつけなさい。
ジャン:
そんなこと言ったって…
第一、こんな時間に僕を呼び出したのは
アリスさんじゃないですか。
アリス:
あ、そうだったわね。
じゃあさっそくだけど、あれ、お願い。
ジャン:
あれ…って? 前方には
ガケしか見えませんけど…
アリス:
そ。例によって、転送されたお菓子が
ガケの上の方に引っかかっちゃったの。
ジャン:
…え…
アリス:
明日の朝にはお菓子を食べたいから、
今夜中になんとかしておいてね?
ジャン:
ええっ!? 僕ひとりで
取ってくるんですか!?
アリス:
当たり前じゃない。
睡眠不足はお肌の大敵だもの。
ジャン:
そんなぁ〜…
アリス:
いいからがんばって!
あたしのためにがんばってくれたら…
ジャン:
…くれたら?
アリス:
…いつか、イイコトしてあげちゃうかもよ?
ジャン:
い、イイコトっ!?
は、はい! 僕、がんばります!
アリス:
あはは、がんばってね〜。
ジャン:
うおおおー! てっぺん目指すぞ〜!
アリス:
…あらら、もう見えなくなっちゃった。
ジャンは動かしやすいわねえ。
…ま、そこが可愛いんだけどね…
場合によっては、あたしの部下に
してあげてもいいかも?
あれで、エッチなところが少しだけ
直れば、結構いい男なんだけどね…
…やれやれ…さて、あたしは寝よっと。
ジャン:
うおおおおおぉー!
イイコト! イイコト!
アリスさんとイイコトォー……!