アリュッタ

第一回

アリュッタ:
あなた、ちょっといい?

ジャン:
…え? 僕ですか?

アリュッタ:
そうよ。

あなた、結構まろんと親しそうに
してるけど、いったいどういう
関係なのかしら?

ジャン:
どういうって…仲間、ですけど。

アリュッタさんだって、
今はそうでしょう?

アリュッタ:
だーかーらー、
そうじゃなくって!

ただの仲間にしては、ちょっと
馴れ馴れしくし過ぎるんじゃない?
って言ってるの!

ジャン:
馴れ馴れしいって、
そんなこと言われても――。

アリュッタ:
私の見立てからすれば、
あなた、究極思考の料理に必要な
食材なんじゃないの?

ジャン:
僕が、しょ、食材ッ!?

アリュッタ:
そうでなければ、
まろんがあなたと
親しくしている理由がないわっ!

ジャン:
なんでそうなるんですかっ!

そもそも、まろんさんは
食材と仲良くするような
人なんですか!?

アリュッタ:
まろんが「食材だけが友達ですの」って
呟いているのを、さっき聞いたわよ。

ジャン:
それはきっと、
比喩的な表現かなにかですって!

アリュッタ:
ああもうっ!
いちいちウルサイわね。
食材が口答えしないっ!

ジャン:
だから僕は食材じゃ――。

第二回

アリュッタ:
あら、ごきげんよう。食材のジャン。

ジャン:
出会い頭になんなんですか、
そのふたつ名!

アリュッタ:
じゃあ、割れ鍋のジャンが、いい?
ルーナが言ってたけど。

ジャン:
どちらも嫌です…

アリュッタ:
それじゃあやっぱり、
食材のジャンね。はい、決まり。

ジャン:
そんな勝手過ぎる――。

アリュッタ:
でも――。

確かにあなた、美味しそうよね。
食材というだけあって。

ジャン:
え、美味しそう…?

アリュッタ:
ええ、思わず食べてしまいたいくらい。
その、くちびるとか――(じゅるり)

ジャン:
あの…念のためにお聞きしますけど、
その「食べたい」っていうのは
比喩的表現ですよね?

比喩的表現だったら僕、
嬉しくてすごくドキドキして
しまうんですけど…

アリュッタ:
比喩?なにそれ?
私はただ、あなたを食べたい――。

ジャン:
うわ、わぁっ、ダメ!
食べないでくださいーーッ!

アリュッタ:
あ、待って――。

行っちゃったわね…

あの食材…確かに美味しそうだけど、
まろんも究極思考の料理に
必要としてるのよね。

捕獲して彼女に
プレゼントしてあげたら、
喜ぶかな――(ぽっ)

第三回

アリュッタ:
あら、ジャン。こんにちは。

ジャン:
アリュッタさん、こんにちは
…って、なんですか!
その手に持ってるでっかい網は!?

虫取りですか? 魚取りですか?
それにしては大きい気がするんですけど。

人間がすっぽり入っちゃいそうな
レベルですよね、その網。

アリュッタ:
網…?
ああ、これはなんでもないから。
気にしなくていいわよ。

ジャン:
気にしなくていいと言われても、
大き過ぎて気になって
しまうんですが…

アリュッタ:
まあ、そんなことより…

よく考えたら、不思議よね。
食材が喋るなんて。

ジャン:
あ、あのー。アリュッタさん?

僕のこと、
まだ食材だと思ってたんですか?

アリュッタ:
まだもなにも、食材でしょうに。

ジャン:
ああっ、どうしたら
誤解が解けるんだろう…

アリュッタ:
……

ジャン:
……

アリュッタ:
スキアリッ!

ジャン:
う、うわぁっ!

そんな、網を振り回してなにを――っ。

アリュッタ:
決まってるじゃない、
食材を捕獲するのよ!

ジャン:
うわーっ! やめてくださいーっ!

アリュッタ:
逃げるなっ! 待てーーっ!

第四回

ジャン:
あ、アリュッタさん。こんにちは…

アリュッタ:
あら、こんにちは。

ジャン:
今日は網、持ってないんですね?

アリュッタ:
私も、暇ではないから。

そんなにいつもいつも、
食材を追いかけていたりはしないわ。

ジャン:
そ、そうですか。
どうやら今日は安全日のようですね。

そう言えば、
前から気になってたんですけど…

アリュッタ:
なにが?

ジャン:
アリュッタさんと、まろんさんって、
どういう関係なんですか?

アリュッタ:
――ッ!

まろんですって!?

ジャン:
は、はい…

(しまった、
聞いちゃいけないことだったのかな?)

アリュッタ:
あの娘、私が料理で世界を
支配しようとしているのを邪魔する、
いやらしい娘なのよね。

簡単に言うと、
ライバル――かしら。

ジャン:
ライバルですか?

アリュッタ:
本当は、まろんなんて、私の
足元にも及ばないですから、ライバル
としては少々足りないのですけれども。

まあでも、
私は優しいですから?

時々、彼女には構ってあげたり
なんかしちゃったり…って、いやん。

そんな、まろんと構い構われ、
あんなことやそんなことだなんて――。

あん、もう、そんな、まろんってば!
あ、んんあ――っ。

ジャン:
あのー、アリュッタさん?

アリュッタ:
え? あ、コホン。なんでもないわ。

つまり私は、まろんなんか
アウトオブ眼中…と、
そういうことなのよ。

ジャン:
そうなんですか…

第五回

ジャン:
あの、アリュッタさん。

アリュッタさんって、
料理うまいんですか?

アリュッタ:
ちょっと、失礼なこと聞くわね。

ジャン:
そういえば、アリュッタさんの料理、
食べたことないなぁ、って…

アリュッタ:
仕方がないわね。
食べさせてあげるわよ。
私の料理は世界級よ。

ジャン:
本当ですか? 嬉しいなぁ!

アリュッタ:
えーっと、ではさっそく。
用意するものは、牛肉かたまり300g、玉ねぎと
キャベツ1/2個、ジャガイモ大2個――。

それからニンニクが少々、サラダ油、
砂糖、塩、こしょう、
サワークリームを適当な感じで――。

ジャン:
なにをつくるんですか?

アリュッタ:
ボルシチよ。

ではまず、材料を
食べやすい大きさに切って――。

…と、調理を始めはしたものの、
面倒なので行程は省略するわ。

ジャン:
――え?

アリュッタ:
心配はご無用よ。
完成したものが、ここにあるから。

ジャン:
うわ、本当だ!
しかも、ほっかほかの出来立て。

アリュッタ:
さあ、召し上がれ。

ジャン:
ちょっとひっかかるところがあるけど、
とりあえず、いただきまーす!

…もぐもぐ、うん。美味しいっ!

これは本当に、美味しいです!
もぐもぐ、いくらでも
お代わりできそうです…っ。

アリュッタ:
……

…ぷぷっ!

ジャン:
…え? どうしたんですか、
アリュッタさん!?

アリュッタ:
あっははははは!
いや、ね、食材が料理を…
ぷぷっ! 食べてる――。

食材が、食材が! 食材が――。
もう、ダメ! なんかツボに
入っちゃった、あはははは――。

ジャン:
……

ごちそうさま、です――。

第六回

アリュッタ:
あ、こんなとこにいたのね、あなた。

ジャン:
なんですか、アリュッタさん?

アリュッタ:
なんだかあっちの方に、
ジャンさん用の看板があったわよ?

ジャン:
僕用の…看板?
なんですかそれ?

アリュッタ:
さあ? 見てきたらどうですか?

ジャン:
は、はい…
よくわからないけど、行ってみますね。

あ、本当だ。
こんなところに看板が。
どれどれ――。

ジャン専用お風呂って
書いてあるけど、あの…

確かに看板の先にはお風呂は
あるんですけど、その上に
でっかい網があるのが気になるんです。

すごく気になるっ!

アリュッタ:
(じーーっ)

ジャン:
はっ!

しかも、物陰から
アリュッタさんが、
じーっと見張ってるし!

これ、あからさまに罠じゃないですか!
絶対にひっかかったりしませんからね!

アリュッタ:
――ちっ!

第七回

ジャン:
アリュッタさん、アリュッタさん。

アリュッタ:
なにかしら? 食材。

ジャン:
食材って、そんな…

あ、そんなことよりも、ですね。

あちらの方に、
アリュッタさん専用の看板が
あったみたいですよ。

アリュッタ:
私専用の看板…?

ははぁん。
それ、あなたが仕込んだんじゃなくて?

ジャン
(ぎ、ぎくぅっ!)

まさかそんな!

僕がこの前の仕返しとばかりに、
罠の看板を仕込むような男に
見えますか!?

アリュッタ:
見えるわ。

まあ、でもせっかくだから
見に行ってあげるわね。

そして、罠の完成度の低さを、
思いっきり笑い飛ばしてあげる――。

…あ、あった。
この看板ね。どれどれ。

アリュッタさん専用お風呂
(女の子たくさん入ってます)
…ですってッ!?

女の子!
これは行かないワケには…っ!

あ、あれ?
上から網が…きゃあーっ!

ジャン:
ふっふっふ。
ひっかかってしまったようですね?

アリュッタ:
ジャン!?
しまった、悔しいっ!

ジャン:
これで少しは、網を持って追われる者の
気持ちがわかったかと思います…

もう、僕を捕まえようとしないって
約束してくれれば、出してあげますけど、
どうします?

アリュッタ:
誰が、そんな約束っ!

ジャン:
…ふっふっふ、それならば、
仕方がない。ちょっとイタズラして
懲らしめる必要がありそうですね――。

アリュッタ:
なによ、いやらしい目つきね。

ジャン:
いやらしいなんて、とんでもない…
さて、まずはその、
柔らかそうな太ももを――。

う、うわぁっ!
火が! 火がっ!

アリュッタ:
あなた、私が動けないと
思って油断したわね?

ふふ、クッキングバーナー、
持ってて良かったわ。

こんな網、簡単に
焼き切っちゃうんだから。

ジャン:
ああっ、そんな…

アリュッタ:
さて、と。形成逆転ね!

ジャン:
すみませんでした、許してくださーい!

アリュッタ:
誰が許すものですかっ! 待てーっ!

第八回

アリュッタ:
ふふ、ついに捕まえたわ!

ジャン:
捕まってしまいました…

アリュッタ:
まさか、私がひっかかったのと、
同じ罠で捕らえることができるなんて、
思わなかったわ。

ジャン:
うう、自分で考えた罠なのに。
一生の不覚です――。

アリュッタ:
この食材をまろんにプレゼントすれば、
喜んでくれるに違いないわよね…

そしてきっと、
お礼にあんなことやこんなこと――。

うふふ、いひ。あは――。

ジャン:
…あのー、アリュッタさん?
ヨダレ出てますけど?

アリュッタ:
ん、コホン。
いけないいけない、
思わず思ったことが口に…

それはさておき、
捕えた食材は、ちゃんと
味見をしなくちゃ、ね。

ジャン:
味見…ですか?

アリュッタ:
と言っても、少しだけ
ペロッと舐める感じだけども。

それじゃ、さっそく。
いただきまーす――。

(ここから妄想キスシーン)

あなた、唇がプルプルしてておいしそうよね。

さて、どこから食べちゃおうかしら。

最後まで行ってません、追記お願いします。

(現実)
ジャン:
(アリュッタさん、
食べるならはやく僕を食べて…)

(…ああっ、
まだかな? まだかな?)

アリュッタ:
……

ジャン:
…あれ?
どうしたんですか、アリュッタさん?
味見しないんですか?

アリュッタ:
やっぱり止めたわ。

ジャン:
ど、どうしてなんですか?

アリュッタ:
生の食材を口にしたら、
きっとお腹を壊してしまうから。

だからまず、
火を通しておこうと思って。

ジャン:
火…を――?

アリュッタ:
ええ。熱湯の釜でグツグツ煮込むか、
あるいはたき火のなかに放り込んで
丸焼きにするか――。

ジャン:
ちょ、ちょっと待ってください!
待って! ダメ!
調理はダメ――っ!




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Last-modified: 2011-09-07 (水) 02:40:20 (2994d)