[[九尾の狐]] 暫定的に"九尾の狐"のデフォルト名"天狐"で載せる事にします。 #contents *第一回 [#i839ef7e] ジャン: ……ううっ…まさか散歩してたら、 こんな場所に迷い込むだなんて… 今にも何か出てきそうでおっかな… ???: そこの者、ここで何をしておる。 ジャン: ヒィッ!? な、ななな、何今の声…!? 天狐: なんじゃ、おぬしか…… ジャン: 天狐…さん…? どうしてここに…? 天狐: それはこちらが先に聞いておることじゃ。 ジャン: ……僕は散歩してたら、 迷ってしまって… 天狐さんは、 どうしてここにいるんですか? 天狐: ワシかえ? ワシは幼き者たちと 戯れておっただけじゃ。 ジャン: 幼い…って、こんなところに ちいさな子供がいたんですか? 天狐:おぬしが考えているのは 人間の子どもじゃろう? ワシが言うておるのは、狐の方じゃ。 ジャン: あ〜、天狐さん、 元は普通の狐だったんでしたっけ? 天狐: 左様じゃ。 いかにも、元はワシも 小さな子狐の1匹じゃった。 じゃから、このあたりから 鳴き声が聞こえた時に、 つい懐かしくなってしもうての。 ジャン: じゃあ、その頭の上にある耳も、 本物なんですよね? 髪飾りの一種とかじゃなくて? 天狐: 何じゃ? ワシを疑っておるのか? 何なら触ってみるがよい。 ジャン: ……えっ……いいんですか… 天狐: いいも何も、 ワシがよいと言っておるのじゃ。 はよう触って、本物だと確認せんか。 ジャン: それじゃあ…お言葉に甘えて、 失礼します… 天狐: ……んっ。どうじゃ、 血も通っておるじゃろう? ジャン: そうですね。 あったかくて、それにモフモフしてて、 触り心地がいいです。 こう、ずっと触っていたいような、 そんな気分になりますね… 天狐: これで…んっ…わかったじゃろう? ワシの…ふぁっ…耳が… 本物じゃということに… ジャン: はい、よくわかりました…… それにしても……はぁ…はぁ… 触ってて気持ちいいですよ。この耳…… はぁ…はぁ… 天狐: ……それでおぬし、 いつまで……ひゃっ… ワシの耳に触っておる……んぁっ… さっきから…ぁんっ… ずっと、くすぐったい…んぅっ…… のじゃが… ジャン: ……はぁはぁ……できれば、 もうしばらく……はぁはぁ… *第二回 [#i839ef7e] *第二回 [#efba9719] ジャン: 天狐さん? 川の前で何してるんですか? 天狐: 何じゃ、おぬしか。ワシに何の用じゃ? ジャン: いえ、たまたま通りかかったんで、 声をかけてみただけです。 天狐: たったそれだけのことか。 それはそれで、何ともつまらんのう。 今しがた眺めていたこの川と同じじゃ。 ほれ小僧、何か余興でもないのか? ジャン: ……こ、小僧って…余興って… 天狐: ないならないで、 何か酒のつまみにでもなりそうな 愉快な話でもないのか? ジャン: ……じゃあ今、思ったんですけど、 どうして天狐さんって、 言葉遣いがこう… 天狐: 何じゃ、古臭いとでも言いたいのか? ジャン: そういうわけじゃないんですけど… ちょっと、時代がかっている感じが 気になって… 天狐: ……ふむ。そういうことか… それなら、説明は簡単じゃな。 それはのう、 ワシがおぬしら人間と違って、 遥に長い年月を永らえておるからじゃ。 ジャン: 100年とか、200年くらい ってことですか? 天狐: その程度、小僧小娘とそう変わらんのう。 ワシはかれこれ、 1万年以上は永らえておる。 もっとも、途中で数えるのも 面倒になったゆえ、 正確なところは覚えておらんがの。 ジャン: ……そ、そんなに生きてたんですか、 天狐さん… どうりで話し方も 今の人と違っているわけだ… 天狐: なに、崇め奉って、 存分に敬ってもよいのじゃぞ? ジャン: じゃあ、天狐さんて、 すっごいおばあちゃんなんですね? 天狐: …………なんじゃと? 小僧…もう1度言ってみよ? ジャン: ……いや、だから… そんなに長い間生きてたら、 もう立派過ぎるおばあちゃんだって… 天狐: …………おぬし、 なかなかいい度胸じゃのう…? ジャン: ……あの、天狐さん? 何だか顔が怖いんですけど… 天狐: 夜道を歩くときは、 せいぜい気を付けるがよい…… このようにのう? ジャン: ひっ! な、なんで攻撃してくるんですか!? 天狐: それは自分の胸に聞くのが 一番早いんじゃないかのう? 長い時間を永らえてるワシも、 おぬしからしたら『年寄り』なんじゃ。 聞くまでもなかろう? ジャン: よく分からないけど、謝りますから、 攻撃しないでくださいってば〜〜〜っ! *第三回 [#i839ef7e] *第三回 [#i5125808] ジャン: あれ、天狐さん、寝ているのかな? 天狐: ……ん? おや、小僧か? ジャン: (……そういや、あの髪型、 かなり独特な感じだよな… 毎日、どうやって整えてるんだろ…) 天狐: どうしたのじゃ? ワシの顔に何かついておるのか? ジャン: いえ、そうじゃないんですけど… 天狐: 何じゃ、歯切れが悪いのう。 はっきり言うてみい。 ジャン: ……あの、天狐さん? その髪の毛って一体、 どうなってるんですか? 天狐: ワシの頭に付いておる、 この房のことを言っておるのかえ? ジャン: はい。ちょっと、 尻尾にも見えるんですけど、 そういう風にしてあるだけですよね? 束ねたものを、 その尻尾みたいなのにしまっている っていうことで、いいんですよね? 天狐: いいや、これはワシの尾の一部じゃが? ジャン: ……えっ…… な、なんで頭に尻尾があるんですか? 天狐: 尻に9本も付けておると、 歩きにくいのでのう。 バランスを取るため、 頭に付けておるのよ。 尻と頭で、ちょうど九尾よ。 ワシが九尾の狐であるゆえにのう。 ジャン: …………っぷ! 髪の毛が尻尾って…!! 合わせて九尾って!! 天狐: …………何じゃ? 何かおかしなことでも言ったかのう? ジャン: ぷぷっ! あはははっ! 天狐さん、冗談面白いなぁ、もう! あははっ!! 天狐: ……小僧、おぬし… ワシを小馬鹿にしとるのか? このワシを… ジャン: ヒイ〜〜〜〜ッ! な、何をするんですか!? 天狐: ……問答無用じゃ。 おぬしは少々痛い目を見て、 反省するがよい。 ジャン: なんでこうなるの〜! ギャーーーッ! 天狐さん、止めてーーーっ! *第四回 [#i839ef7e] *第四回 [#ifd6cd67] ジャン: あれ、天狐さん? こんなに暗いのに空なんか見て、 何かあるんですか? 天狐: 月見じゃ、月見。 風情の分からん小僧じゃのう。 ジャン: あー、そう言えば、 今日は月がよく見えますよね? 天狐: うむ。おぬしもたまには 月見とでも洒落込んでみたらどうじゃ? そうしてゆっくりするのも…… 悪くはなかろう? ジャン: ……そうですね。のんびりして、 自分なりにリラックスする時間も、 今は必要かもしれないですね。 天狐: じゃろう? 最近はおぬしも、 少々気が張ってたのではないか? まあ今宵くらい、 先々の苦労も忘れて、 安らかに過ごすのもよかろう。 ジャン: はい。僕もそうすることにします。 ジャン: それでですね、天狐さん… お嬢様ったら、ひどいんですよ〜。 まったくその通りなんですよ! ……はぁ〜… 天狐さんだけですよ、 僕の話をちゃんと聞いてくれるの… 天狐: くくくっ。 こうも簡単に化かされて、 自分の杖に話しかけるとは… なんとも間抜けな奴じゃ。 これはなかなか、 今後も化かし甲斐がありそうじゃの〜。 *第五回 [#i839ef7e] *第五回 [#cdf75452] ジャン: ……こないだはヒドイ目に遭ったな… まさか、話の途中から、 天狐さんに 化かされてただなんて… う〜ん……これも精神修行の一環、 という感じに開き直っておいた方が いいのかなぁ… 天狐: ……小僧、おぬし、 何をさっきからブツブツと 言っておるのじゃ? 何か、珍妙な熱病にでも かかっておるのかえ? ジャン: 天狐さん!? 今の聞いてたんですか!? 天狐: ここに来たら、聞こえてきただけじゃ。 そもそも、おぬしが勝手に 話しておったのじゃろうに。 ジャン: ……それはそうですけど… 天狐: ところでおぬし、その包みは何じゃ? なにやらワシの好きな匂いがするぞい。 ジャン: ああ、これですか。 天狐さんが好きらしいって聞いて。 もしよかったら、どうぞ? 天狐: こ、これは! ワシの大好物のお揚げではないか! ジャン: 半信半疑だったんですけど、 本当だったんですね? 天狐: うむ、左様じゃ。 では、さっそくいただくぞい。 ……もぐもぐ……うまいのう…… もぐもぐ…うまいのじゃ… ジャン: (……こんなに嬉しそうに食べて…… 本当に好物だったんだなぁ…) (僕ともこれを機に、 もう少し話してくれるように なればいいんだけど…) 天狐: ……ふぅ……よう食った… 満足、満足…… 次も持ってくるのじゃぞ? ではまたの。 ジャン: え、はい。そうします…… って、ええっ!? お、お揚げ食べたら、 即帰っちゃうんですか!? 冷たいなあ… *第六回 [#i839ef7e] *第六回 [#f22eccd3] ジャン: あー、いたいた。天狐さん。 こないだ言われた通り、 今日もちゃんと持ってきましたよ? 天狐: なんとまぁ、律儀な奴じゃのう。 ワシとしては、お揚げが食べれて 満足じゃがの。 大好物のお揚げ、ありがたく、 ちょうだいしておくことにするかのう。 今回も悪いのう。 わざわざ、ワシの大好物を 持参させてしもうて。 ジャン: いえいえ。これくらい、 お安い御用ですよ。 天狐: そうは言ってものう。 ワシにもお揚げの礼をする 義理があるでな? すぐにとは言わんが、近いうち、 何かしらの形で礼をさせてもらうぞい。 ジャン: そんなに気にしないでいいですよ。 僕は天狐さんと、 少しでも仲間として打ち解けられたらって 思ってるだけですから。 天狐: そうか…? ふむ…そういうことならば… ワシもおぬしと仲間づきあいをするに… やぶさかではない…かの。 ジャン: え! ホントですか!? 天狐: ああ。本当じゃ。その証拠に… ワシの尻尾を握ってもよいぞ。 ジャン: 尻尾を…ですか? それは、確かに もふもふして気持ちよさそうですが… 何か特別な意味が? 天狐: うむ、これはの、 ワシら狐族の間で親しいもの同士が 親愛の情を表すあいさつじゃ。 まあ、お前ら人族でいうと、 握手のようなものじゃな。 ジャン: なるほど…握手ですか。 でも…どの尻尾を握れば? 天狐: ん?ああ、どれでもかまわん。 好きなのを握るがよい。 ジャン: わかりました。では…これで! よろしくお願いします! 天狐: はぅ……っ! くぅ……んっ! ば、ばかものぉ…! い、いきなり… 握るでなぃ…はぁあん… ジャン: ご、ごめんなさい! 手、放しますから! 天狐: だ、だめじゃ…小僧、手を放すな… 尻尾を…尻尾を優しくこするのじゃ… ふぁああぁん! ジャン: 天狐さん!? 天狐: は、早く…早く…っ! ぁあああ… あうぅんっ! ジャン: 天狐さん、 尻尾が…ぴくぴく震えてますよ。 き、気持ち…いいんですか!? わ、わかりました。もっと激しくですね? こうですか? なんとなくわかります… 天狐: くくくっ。 この小僧、またも簡単に化かされとるわ。 ……もぐもぐ……あぐあぐ…… このじゅわっとしみだす汁と食感… たまらんのう… しかし、なんじゃな。 面白い見世物を見ながら食べると 普段にもましてお揚げがうまいのう。 *第七回 [#i839ef7e] *第七回 [#d0e11090] ジャン: ……こないだも、 また化かされてしまった… 一体いつの間に、 僕は化かされていたんだろう… でも今度こそ、 今日こそは化かされないぞっ! 天狐: うむ。小僧、今宵もおったか。 感心じゃな。 ジャン: ちゃんと今回も、 天狐さんの好きなお揚げ、 持ってきましたよ? 天狐: 阿呆とばかり思うとったが、 これでなかなか聡くなったものじゃな。 褒めてつかわすぞい。 毎度毎度すまんのう。 では、ちょうだいするかのう。 ジャン: (そういや、こうやってお揚げを 渡すあたりから化かされて…… まさか!) ……はっ! 天狐さん、 また僕を化かしてますね! 天狐: おぬし、何を言うておるのじゃ? 今日のワシは寛大ゆえ、 さようなことをする気など、 さらさらないのじゃが? ジャン: またまた〜! 天狐さん、 いつもそうやって 僕を化かしてるんですね? でも、今日の僕は一味違います! 今回ばかりは、そうは行きませんよ〜! 天狐: ……ふむ。 何を言うても無駄なようじゃのう… ジャン: そうやって優しいフリをしてるのも、 すでに僕を化かしに かかってるからですよね? 天狐さんが、 素直にお礼を言うとは思えないですし! 天狐: ……何じゃと…? 小僧、ワシを馬鹿にしておるのか? ジャン: 馬鹿にだなんてしていませんよ? ただ、今の化かされた状態を なんとかしたいだけです。 天狐: ……ほほう……ならば、 その間抜けな目を…… はよう覚まさせてやらんといかんなぁ… ジャン: うぎゃっ! あ、あれ? なんか痛い… えっ、ええっ!? これって、夢じゃないの!? 天狐: このたわけめが! 最初から『化かしておらん』と 言うておるじゃろうに! これから十分に痛い目を見て、 反省するがよい! ジャン: ぎゃ〜〜〜〜〜っ!! ば、化かされてなかったの〜〜〜〜っ! 天狐: 待たんか小僧! このワシが直々に、 たっぷりと折檻してくれるぞ! ジャン: うわ〜〜〜っ! 天狐さん、 ごめんなさい〜〜〜〜〜い!! *第八回 [#i839ef7e] *第八回 [#i163f8e3] ジャン: ……天狐さん… 僕なんか呼び出して、 どうする気なんだろう… ま、まさか……こないだ、 化かされてないのに、化かしてるって 言って、怒らせちゃったから… そのおしおきの続きなんじゃ… ど、どうしよう… (ここから妄想) 天狐: ふむ。定刻通りに来ておるようじゃの、 小僧。 ジャン: すっ、すいませんでした! 天狐: どうしたのじゃ? おぬし、 ワシに何か謝るようなことをしたのか? ジャン: こないだ、 化かされてない時に 怒らせてしまったので! 天狐: ああ、そのことか。 それはもうよいのじゃ。 十分に反省してもろうたからのう。 ジャン: ……そ、それじゃ… 今日はこないだの続きじゃ なかったんですか…? 天狐: 終わったことを 今になって続けてどうする? おぬしはほんに、 可愛げのある阿呆じゃのう。 ジャン: それなら、今日は何で 僕を呼び出したんです? 天狐: まだ気付かんのか? おぬしは阿呆な上に、 鈍感な奴じゃのう? まぁ、時おり化かして からかうこともあるが、 何度も会って、話をしておるのじゃぞ? ワシがおぬしのことを気に入っておる、 ということじゃ。 そのくらい、男なら自分で気付かんか。 この馬鹿たれが。 ジャン: ……そ、それって…… もしかして、本当に天狐さんが…… 僕のことを…? 天狐: ……とことんまで鈍い奴のよう… まったく…… ワシが目をつぶっている間だけじゃぞ… しかし、永らく生きてきたが、 こんな気持ち…久しゅうなかったわい… ジャン: は、はいぃーっ! (キスシーン) 天狐: まだか?はよせい… いつまで待たせるつもりなのじゃ? 男ならいさぎようせんか せっかくワシがここまで積極的になっておるのじゃぞ? 小僧、待ちくたびれたぞ さあ、ワシの熱く濡れた唇に、おぬしのそれを… お揚げよりも甘美な味、今すぐ確かめさせるのじゃ (ここから現実) ジャン: ……うーん……天狐さーん… 天狐さんって、 結構抱き心地が良いんですね〜… それに良い匂いがします… こんなに色っぽいと…… 僕もう、たまらないですよ…… むちゅ〜っ… 天狐: かははははっ! こやつ、また化かされおって! ほんに化かし甲斐のある奴じゃて! めんこくてたまらんのう! ジャン: むちゅ〜っ! 天狐さぁ〜ん……